丹波焼陶芸家(延年窯)、市野弘之(いちの・ひろゆき)氏が9日午前11時32分、老衰のため篠山市内の病院で死去した。92歳。自宅は篠山市今田町上立杭449ノ1。葬儀は11日、おこなわれた。喪主は長男で陶芸家の年成(としなり)氏。
丹波焼窯元の三男として生まれ、復員後、21歳で家業の窯元で作陶に入った。古丹波に美を見出した「民藝運動」の創始者、柳宗悦や、イギリス人の陶芸家、バーナード・リーチとの交流を深める中で、丹波焼の伝統を見直し、迫力に満ちた大皿の制作や、さまざまな色彩の釉薬を掛け分けて模様をあらわす装飾技法などに取り組んだ。
1958年、ベルギーのブリュッセルで開かれた万国博覧会でグランプリに輝き、その翌年に県文化賞を受賞。62年、県工芸美術作家協会を設立。65年には丹波焼の中堅陶工による「グループ彩炎」を結成するなど、現代丹波焼の著名作家として、制作以外の仕事にも奔走した。87年には文部省地域文化功労賞を受けるなど受賞多数。
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