桜の開花宣言が発表された。妙齢女子3人の朗読会「さくら組」も始動の頃を迎えた。染井吉野より遅咲きで、より色淡く儚げな古木桜のもと、朗読するのは谷崎潤一郎の「春琴抄」である。
50歳以上の年代の方たちには、その昔に山口百恵と三浦友和で公開された映画をご覧になられた方も多いだろう。美しく流麗な文章で綴られたどこまでも耽美な物語である。目の見えない春琴という美しい人と、その春琴に全身全霊を捧げる佐助。徹頭徹尾、春琴佐助だけで創り上げる物語で、血を分けた子どもでさえもその世界に立ち入ることは許されない。
朗読していて感じるのは、2人のなんと幸せなことよ!雪の中で寒さに震えながら三味線を弾こうが、いくら厳しく稽古をつけられようが、顔に熱湯をかけられようが、自ら目を針で突こうが、2人で在られたら、それで幸せ万事OKなのである。他人の目など全く気にせず自分たちのことだけにしか興味がない、そのキッパリとした姿勢がいっそ清々しい。
もちろん普通の人間にはそんな生き方は到底できない。だからか春琴を朗読しながら演じていると、スカッとして何とも気持ちが良い。自分のエゴを全て受け入れてくれる人に好きなことを想いのままにぶつけられるということは、もしかしたらこの世で最高の贅沢なのかもしれない。
朗読ライブ「『華の宴』~春の宵に朗読を。」4月14日(土)午後6時から宵桜を愛でながら篠山市にあるカフェアーボにて開催です。
(土性里花・グループPEN代表)
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