雛の時期がやってきた。 もの心ついた頃から、寒さが緩んだぽかぽかと暖かい日和に、5段飾りのお雛様がいつの間にか飾られていたことを思い出す。母と祖母が選んでくれたお雛様は顔がおぼこくて何とも愛らしく大好きだった。この可愛いお顔と育った私は、結婚して家を出る時も一緒に連れてきた。だから娘たちもこのお雛様と共に大きくなった。
私と共に半世紀を生きてきたお雛様は、私が白髪になったように御髪が乱れるようになり、お内裏様などつるりと髪が取れてしまった。お互いに歳を重ねた。
娘たちが年頃になり、自分も働いて忙しくしているのを言い訳に、飾らず過ぎてしまう年も何度かあった。お雛様とお内裏様だけをぎりぎり間に合わせのように出す年もあって、最近はいい加減なものだった。でも娘たちの成長を私と同様に見守って来てくれたお雛様だから、きっと良い人と巡り合わせてくれるだろう。
大人になってから、お雛様に込められた祖父母や両親の気持ちがわかるようになった。その元気にすくすくと成長してほしいという想いと一緒に、私は育った。まだ寒いけど時々春の香りがするこの季節になると、昔のことをよく思いだす。 時代は変わっても、親の願いは変わらない。幸せになってほしい。ただそれだけなのだ。
篠山でも3月10日―18日まで8会場で「丹波篠山ひなまつり」が開催されます。皆さまもどうぞ可愛いお雛様に出会いにお越しください。
(土性里花・グループPEN代表)
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