ひと月ほど前、俳句の先生と「角川短歌賞・俳句賞」の授賞式と角川賀詞交換会に出席した。初句集で『俳句』編集長にはずいぶんお世話になったお礼も言いたく、親しい句友にも同伴してもらう。俳句雑誌でよく見る俳句界の錚錚たる人たちに会えるだけでわくわく。日帰りで東京なので、少し早めに出かけて吟行もしようということに。
東京といっても広い、何度も行ってはいるが文京区本郷にある樋口一葉が住んだ菊坂、そして一葉がよく通った質屋などを見たあと、東大の赤門を目指す。少しお腹が空いてきた。そこで先生の提案で東大の学生食堂へ。私は親子丼(三百六十円)、先生は新幹線の中で早くに駅弁を食べたのでケーキセット(二百三十円)。句友はラーメン(三百五十円)。学生ばかりではなく、私たちのような高齢のミーハー族、観光客も混じっている。もちろん洋書片手に持参の弁当を食べる東大生も。その後、目的の三四郎池へ。本来の名前は「育徳園心字池」だが、漱石の小説「三四郎」で、憧れの女性「美禰子」と出会った場所であることから三四郎池と呼ばれるようになった。樫や楠などの常緑樹のほか、飯桐や藪椿の大木や桜の大樹など、樹齢百年を超える樹々がうっそうと茂っている。この日は池に溜った落葉を掻き出す作業をしていた。鴨が数羽いて、早速句帳を取り出す。
今年は夏目漱石生誕百五十年だとか。小説の他にもすぐれた俳句をたくさん残した漱石。時代を越えて読み継がれていることの素晴らしさに改めて感銘。
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