突然、悪夢のように大きなトラックが目の前に立ちふさがる―。ここは奈良の十津川から和歌山の龍神に抜けるれっきとした国道425号。狭いうえに木や葉っぱ、岩が行く手を阻み、崖側の路肩は崩れてる、ガードレールはない、右はでこぼこの岩肌、左は深い渓谷、カーブを曲がるたびに「転落!死亡事故多し!」とデカデカと赤看板の注意表示、そして、絶対に対向車とはすれ違い不可能である。
いやいや、無理でしょう、絶対にこの道に入ってきてはいけない車でしょう、と悲鳴のような自問自答を繰り返しつつ、渓谷側に首を突き出して夫の助けになろうとするが、なんと路肩が崩れて消えている。トラックの運転手さんの下がれという指示に、いや、もちろん下がりますけれども!こ、この狭い道が!!などと言葉にならない言葉を心の中で連呼しつつ、ようやっと車一台幅の路肩までたどり着いた。すると運転手さんが「あんたら龍神まで抜けるんか?それやったらこの先で舗装工事してて、トラックが3台入ってるからのぉ、気ぃつけていきや」と教えてくれる。
3台という言葉に内心驚愕ではあったが、運転手さんの優しさが心に響く。普通車が通るだけでも困難な山道を、あれほど大きなトラックで…と、プロの凄さに感動し、日本のインフラ整備を支えている方たちに感謝する出来事であった。結局、その酷道!はそれから2時間続き、トラック1台、ユンボ1台とすれ違い、思い出深いドライブ旅行となったのである。(土性里花・グループPEN代表)
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