この時期の作業場は溢れんばかりのさまざまな色に埋め尽くされる。藍色の一つ“茄子紺”のナス。少しくすんだ青味のある翡翠色のモロッコインゲンに、若草色のインゲン。鮮やかな山吹色と深い緑の常盤色のズッキーニ。黒ずんだ落栗色のゴボウ、艶のある紅色のトマト、透明感のある茶褐色の飴色の玉葱。子供たちの空腹しのぎは薄緑の夏虫色の胡瓜。
本当にこの時期の野菜は色鮮やかで、一言で赤や黄、緑と言ってしまうにはもったいない美しさがあり、見ているだけで元気を貰える。そんな野菜を収穫する一方で、とうとうブルーベリーの気の早い一番果が膨らみ、色づき始めた。柔らかな萌黄色一色だった小さな実が太陽の光を浴びて、ほんのりと夜が明けるように浅く紫がかった曙色に染まりだした。
うちの場合、「春はあけぼの」ではなく、「夏にあけぼの、ようよう実った畑、少し茂り過ぎ、樹海になりたるは入りにくく」てな感じ。って、そんな悠長なことを言っている場合じゃない!父ちゃんは夏野菜の世話と収穫の一方で、防鳥ネット張りの下準備をいそいそと。母ちゃんは野菜の発送業務の傍ら、ブルーベリーの受注、発送準備。子供たちだって夜はテレビを見ながらブルーベリー用パックに有機JASシールを貼る内職。慌ただしくなってきて、落ち着かない。
でも、ふと思う。家族揃って一年で一番忙しい時期に、こうして頑張れるのって、まるで温かで柔らかい色に包まれているなって。
(古谷暁子・ブルーベリー農家)
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